縄文人と弥生人

令和元年5月13日に国立科学博物館の研究員が縄文人の全ゲノムを解析し、縄文人が約3万8000年前から1万8000年前に大陸の集団から分かれたとみられることが分かったという発表がありました。日本人のルーツにゲノムの解析から迫っています。すごい、興奮しますね。さて今回は、縄文人と弥生人の話。

縄文人

縄文人は、縄文時代が約1万6000年前に始まったので、それ以前に日本にいた旧石器時代の子孫が主体をなしていたと考えられます。縄文人についても、様々な説があります。ただ、縄文人の祖先が同じ系統の人たちであったかどうかは定かではありませんが、縄文時代の後半になると縄文人の形質はかなり均一化され、縄文人らしい特徴がはっきりしてきます。

身長は、低く、男性で平均158㎝、女性で149cmと推測されます。頭が大きく、顔は幅広で四角い印象です。ほりの深い顔つきという特徴があります。この縄文人に、形態学的形質で比較を行ったところ、中国やジャワ島ではなくオーストラリア南東部、メルボン近郊のキーローから見つかった化石人骨と似ていることが分かりました。典型正確率で言うと、なんと縄文人と86%の一致という結果です。

また、縄文人は、米を栽培し、精密なつくりの土器や石製品を用い、漆や天然アスファルトを利用していました。現在残る遺跡から見て、縄文人は、人は皆平等だとする考えと、自然と調和した生きかたを重んじていたことが明らかにされています。つまり、価値観や哲学、人生観、世界観、信仰心といった生活や生き方を支える高度な精神文化を発達させてきたのです。

弥生人

水田稲作農耕を生業とした弥生人の集団が、朝鮮半島から北部九州や山口県を中心とした地域に進入し、本土日本が縄文から弥生時代に移行していきます。大陸から渡来した弥生人が、もともと日本に住んでいた縄文人と混血しながら広がっていき、かなり置き換わったのに近い状態になったとも考えられます。

弥生人の特徴としては、背が高く男性が平均163cm、女性が151cm顔の彫が浅く顔面が平坦です。これは、弥生人の祖先が寒冷地適応した北方の人々であろうことを示唆しています。現在の多くの日本人が、北方系の特徴をもっていることからも明らかなように、弥生人の形質は途切れることなく私たちに受け継がれているようです。
弥生人は、上下の秩序を重んじ貧富の差を当然のものとみていました。これは、有力な指導者のもとで、初めて土地開発の上に立つ水稲耕作が可能になることによります。

追記

ご先祖様をたどっていくと、日本人のルーツにたどりつきます。DNAの解析などで様々なことが判明してきています。ちなみに、今回の縄文人の全ゲノムの解析によると、国内の地域ごとに縄文人から現代人に受け継がれたゲノムの割合が大きく異なっていることが判明しています。本州の人々は、縄文人のゲノムを約10%受け継ぎ、北海道のアイヌの人は、7割、沖縄の人は3割。そして、現代人の様々な疾患についても縄文人のゲノムから説明できる可能性もあるとのこと。これから先、もっといろいろなことが解明されると思うと、わくわくしますよね。

【参考図書:DNAで語る日本人起源論 篠田謙一 岩波現代全書・日本人になった祖先たちDNAから解明するその多元的構造 篠田謙一 NHK出版・アフリカで誕生した人類が日本人になるまで 溝口優司 SB新書・縄文人からの伝言 岡村道雄 集英社新書】

(黒川総研 系図倶楽部より)